両立支援の取組事例
会社のエースが難病に罹患
創立以来初の両立支援に産業保健センターを有効活用
株式会社オンワード・マエノ
- 会社名
- 株式会社オンワード・マエノ
- 所在地
- 宮城県仙台市
- 事業内容
- 保険代理店
- 設立
- 昭和59年4月
(創業昭和49年6月) - 従業員数
- 20名
(女性14名、男性6名) - 平均年齢
- 約40代後半
- 産業保健スタッフ
- 1名
中小企業にとって、バリバリと一線で働く有能な社員が突然病気で働けなくなることは、大企業とは比べものにならないインパクトがあります。
仙台市で保険代理店を営む株式会社オンワード・マエノでは、社員第1号の有能な社員が膠原病という難病に罹患、入院・治療を余儀なくされました。社内に産業医・産保スタッフもおらず、あまりに突然のことで、どうすれば治療をしながら仕事を続けてもらえるのだろうかと悩んだそうです。
公的資源である産業保健総合支援センターを有効活用するとともに、専務自らが両立支援コーディネーターの資格まで取って両立支援に取り組んだ事例をご紹介します。
弊社の社員第1号の女性が2018年に膠原病に罹患し、そのとき初めて両立支援というものに取り組みました。
彼女は当時30代前半で、顧客対応も素晴らしく、頼り甲斐があり、業務や会社のこともよくわかっていて、誰からも頼られる存在でした。そんな彼女がある時から体調を崩し始め、病院で診察を受けるもなかなか原因がわからず、膠原病だとわかるまで1年もかかりました。
彼女は指先や関節の痛みで動けなくなったり、不安感・倦怠感で苦しんでいました。また当時彼女は、小さなお子さんの育児真っ最中でした。体調を崩してからは月に半分も出社できず、会社としての対応が求められました。
時差出勤、出勤日調整、代替スタッフの雇用(パート)、業務量調整などを行いましたが、本人から「これ以上は、周囲に迷惑をかけてしまうので辞めたい」との申し入れがありました。
当時は会社に明確なルールがなく、彼女に合わせてさまざまな取組をしていたのですが、前例もなく、彼女にとってもそれが“私だけ”と負い目を感じさせていたのです。
とにかく情報が欲しかったので、労働局へ行って相談したり、健康経営などのセミナーに積極的に参加しました。そのセミナーで出会ったのが宮城県産業保健総合支援センター(以下「産保センター」)の社会保険労務士であり、両立支援促進員の方でした。
その後、産保センターから支援を受けることとなります。社会保険労務士(両立支援促進員)と産業保健相談員の2名の方に何度も会社に来ていただき、さまざまな話し合いを行いました。
それにより、両立支援の知識を得ることができ、主治医と面談して会社として勤務時に注意すべき点がわかったり、本人が両立支援は自分だけのことではないということが理解できるなど、前向きに両立支援に取り組むことができました。
前述のように当初は、時差出勤、出勤日調整、代替スタッフの雇用(パート)、業務量調整などを行いました。その後病名が判明し入院治療が必要になったときに、本人の了承を得て従業員に病名や症状を公開し、会社として支援することを周知しました。
また、弊社は民間保険に加入していたので、入院費などに関してはそれを活用して自己負担がなるべくかからないようにできました。なお、彼女の例以降も2名のスタッフが同様の補償を受けて入院治療を行っています。
退院後は産保センターから協力を得ました。本人に体調の記録をつけてもらうことで体調の波がわかるようになり、業務の計画が立てやすくなったり、病院への説明時には治療の参考にもなりました。 どんな病気でも自分で体調を把握するのは効率的で、効果的に治療を受けることができるのでおすすめです。
今年の4月以降はテレワークを導入したことで、それまで月に20時間程度しか働けなかったのが、70時間ほど働けるようになり、就業時間が飛躍的に伸びています。現在は週3回勤務(週1回は出社)しています。
産保センターの方とのお話の中で、両立支援コーディネーターというものを知り、研修を受講してみてはどうか、とお話をいただきました。
そして実際に研修を受けたことで、支援する側の知識の向上に非常に役に立ちました。
また、研修にはさまざまな会社や団体から、看護師や保健師、産業保健スタッフなどの方が参加されており、それらの方々とつながることにより、人脈ができるとともに知らなかった産業保健の知識を得ることができました。
社内ルールの整備、人事評価制度の見直し、健康経営の実践など、両立支援を通して見直すことができたこともたくさんありますし、社内の結束力も上がったと感じます。
また現在、両立支援の窓口としては私1人だけなので、今後は他の社員にも学んでもらい任せていきたいと考えています。
中小企業にとって有能な人材は財産です。退職させることもできますが、新たに人材を育てるには時間もお金もかかります。病気になっても負い目を感じることなく、公平で安心して働ける環境づくりが大切だと思います。
取組事例一覧