厚生労働省

治療と仕事の両立支援ナビ

両立支援の取組事例

完治を目指したがん治療を提供するだけではなく、
診断時から治療後の生活全般まで患者さんを支援

公益財団法人 がん研究会有明病院

トータルケアセンター 渡邊雅之 センター長
患者家族支援部 高野利美 患者・家族支援部長
麻酔科・産業医 升田茉莉子 副医長
がん相談支援センター 河島地草 副看護師長
宮城八重子 医療ソーシャルワーカー 

会社名
公益財団法人 がん研究会有明病院
所在地
東京都江東区
事業内容
医療業
設立
1908年4月
従業員数
常勤職員1,898名(2022年1月1日現在)
平均年齢
39歳/男性3:女性7

70年前、日本唯一のがん専門病院として29床で発足した当院はいまや686床の充実した内容を誇る近代的病院になりました。これからも当院は常にがんの診断・治療・予防に貢献するとともに、生命科学の先端を開拓します。最善の治療を提供するのはもとより、患者さんが安心・納得・信頼して自分らしい生活を送れるようサポートしていきたいと考ています。

患者さんの仕事と治療の両立支援に取り組んだきっかけをお聞かせください。

がん診療連携拠点病院にはがん相談支援センターの設置が義務づけられており、役割の一つとして「就労に関する相談」への対応が求められています。制度上求められているということだけではなく、当院はトータルケアセンター、サバイバーシップ支援室を立ち上げました。最善の治療を提供するのはもとより、患者さんが安心・納得・信頼して自分らしい生活を送れるようサポートしていきたいと考ています。より良い社会生活を送ることができるように支援することの中には、生きていく糧を得るだけでなく生きがいにもつながる仕事の継続をサポートしていくことが大切であると考え、まだまだ不十分とは思いますがより良い就労支援の方法を模索しているところです。

貴院において、患者さんの両立支援に取り組む病院理念や基本的な考え方、方針を示したものがあればお聞かせください。

「がんとともに生きる」
当院は、がんになっても自分らしい人生を送るために、働き続けたい、学び続けたい方が働きながら、あるいは学びながら治療に取り組めるように支援します。完治を目指したがん治療を提供するだけでなく、各分野の専門職員が「Patient Flow Management」の考えに基づき、診断時から治療後の生活全般まで患者さんを支援していきます。

院内の両立支援体制をお聞かせください。

■相談窓口
がん相談支援センターとなっています。就労に関する相談があった場合は、がん相談支援センターを紹介するよう院内職員への周知活動(新入職者へのオリエンテーション・看護部継続教育研修・職員向けデジタルサイネージ・院内WEBセミナーでの紹介等)を実施しています。
■他職種連携
2020年度の療養・就労両立支援指導料算定方法の改定に合わせて,副院長,産業医,外来統括医,がん相談支援センター、外来医事課を担当者としてがん治療と仕事の両立支援に関しての院内医療スタッフへの周知、診療報酬算定をスムーズに行う仕組みづくりを進めてきました。2021年には個々の患者さんに必要な情報や治療中・治療後に起こり得る問題点を収集し、入院中や退院後の生活に至るまで一貫した支援を行うPatient Flow Management (PFM)を実践していくためトータルケアセンターを立ち上げ、センター内のサバイバーシップ支援室を中心としてさらなる院内、患者さんへの広報活動、支援の実践を行っています。

企業や産業保健スタッフ等との連携方法についてお聞かせください。

患者さんから相談を受けて「勤務情報提供書」を会社と一緒に作成するように提案します。作成された「勤務情報提供書」の情報を基に職場復帰に向けた主治医意見書を作成しています。

患者さんに院内の両立支援の取組をどのように周知されていますか?

治療開始前までに実施する看護師面談で、就業している患者に対してがん相談支援センターで作成している「働き続けたい方が治療と仕事を両立するために」という就労支援のチラシを配布しています。就労支援を希望された患者さんにがん相談支援センターの案内をしています。また、院内の各場所にポスターやチラシの設置、ホームページへの掲載、がん情報コーナーにデジタルフォトフレームを利用した案内をしています。

今後の展望・課題をお聞かせください。

2020年度の診療報酬改定により療養・就労両立支援指導料の適応が拡大、要件の変更が行われましたが、がん相談支援センターにおける就労支援が診療報酬算定につながる割合は少ない状況です。今後も患者さんの“働き続けたい”という気持ちを支援していきたいと思います。

取組事例一覧