厚生労働省

治療と仕事の両立支援ナビ

両立支援の取組事例

浜松市内の地域がん診療連携拠点病院との協働で治療と職業生活の両立を支援

総合病院 聖隷浜松病院

医療福祉相談室・がん相談支援センター
医療ソーシャルワーカー・課長補佐 島田綾子氏

会社名
総合病院 聖隷浜松病院
所在地
静岡県浜松市
事業内容
医療機関(総合病院)
設立
1962年3月
従業員数
2,189名(2021年4月現在)
平均年齢
36.8歳/男性3:女性7

聖隷福祉事業団は創業以来80年の歴史を持ち、1都7県に病院、福祉施設などを多数経営している日本有数の規模をもつ社会福祉法人です。日本初のホスピス病棟開設やインフォームド・コンセントの徹底など、患者の立場と権利を尊重する姿勢が高く評価されています。「利用してくださる方ひとりひとりのために最善を尽くすことに誇りをもつ」という病院理念のもと、職員一丸となり日々の診療やケアを提供しています。

患者さんの仕事と治療の両立支援に取り組んだきっかけをお聞かせください。

元々がん相談支援センターでも就労にまつわる相談を伺っていましたが、2012年6月に策定された第2期がん対策推進基本計画がきっかけとなり、病院の中で就労の専門家との連携が始まりました。聖隷浜松病院では2014年10月に第1回目となる病院内での社会保険労務士による就労相談会を開催して以降、定期的に就労の専門家との連携(相談会の開催等)を図っています。2015年には、浜松市内の地域がん診療連携拠点病院のがん相談支援センター相談員達が「がん患者の就労相談実務者ミーティング」というワーキンググループを立ち上げ、協働しながら事業主や市民に向けた普及啓発活動や地域ネットワーク構築に向けた取組を行っています。

貴院において、患者さんの両立支援に取り組む病院理念や基本的な考え方、方針を示したものがあればお聞かせください。

聖隷浜松病院は「人々の快適な暮らしに貢献するために最適な医療を提供します」という病院使命、そして「利用してくださる方ひとりひとりのために最善を尽くすことに誇りをもつ」という病院理念のもと、職員一丸となり日々の診療やケアを提供しています。
がん相談支援センターでは、がんと診断された時から相談できる環境整備を行い、患者さんの不安の軽減や制度に関する情報提供、必要に応じ職場や関係機関との連携を図りながら、治療と職業生活の両立を支援しています。

院内の両立支援体制をお聞かせください。

「がん相談支援センター」や「治療と仕事の両立支援」に関する案内掲示やチラシの配布のほかに、がんと診断された際に「がん相談支援センター」の案内カードを患者さんにお渡しし、相談窓口の周知を図っています。また、院内のAYA支援チームや緩和ケアチーム(多職種構成)とも連携し、働くがん患者さんへの早期介入を行っています。
相談窓口では、看護師、ソーシャルワーカー、臨床心理士等が必要に応じた連携を図りながら相談者の相談に応じています。

企業や産業保健スタッフ等との連携方法についてお聞かせください。

多くは診断書等の書類上のやりとりです。具体的な仕事内容や身体状況等、細かな個別性の高い情報が必要となることも多いので、必要に応じ「事業所における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン(厚生労働省)」内の主治医意見書を活用したり、相談員が仕事内容などを聞き取りするなどの工夫もしています。また、がん相談支援センターでは企業からの相談も受け付けています。

産業保健総合支援センターや近隣の医療機関との連携についてお聞かせください。

静岡産業保健総合支援センターの両立支援促進員やハローワークの就労支援ナビゲーターによる相談会を定期的に開催しています。また、相談会以外でも患者さんからの相談があれば連絡をとり個別対応をしていただいています。

患者さんに院内の両立支援の取組をどのように周知されていますか?

年に1回、「治療と仕事の両立支援」に関する講演会を開催し、普及啓発活動に取り組んでいます。

両立支援の実例・実績をお聞かせください。

半年前にがんが見つかり入院して手術をし、今は外来で抗がん剤治療を続けていますが、主治医から無理のない程度に働いても良いと言われ復職を考えている患者さんより相談があった事例です。具体的には、会社に無理のない程度と言いづらいがどうしたらよいかという相談でした。
主治医と会社の産業医、もしくは会社の労務担当者(総括安全衛生管理者・衛生管理者・安全衛生推進者など)と病状の情報交換をすることで、会社に患者さんの状況を正しく理解してもらうことができるだろうということ、そのうえで復職の相談を行ってみてはどうかと提案しました。患者さんは、会社の衛生管理者が直属の上司のため相談しやすいとのことで、主治医と情報交換することを希望されました。後日、主治医からの意見書を持って会社に出向き相談したところ、会社も状況を把握し、半日勤務から始められるようになり、現在も通院しながら仕事に行くことができています。

今後の展望・課題をお聞かせください。

「がん患者さんが治療と仕事を両立できる環境の整備に向け連携を図ること」を目的として、市内の地域がん診療連携拠点病院の相談員が主体となり立ち上げたネットワークを活かし、患者さん、企業、病院、行政、関係機関などそれぞれが必要に応じ相談をしたり連携をしたりしながら、治療と仕事の両立を社会的にサポートする仕組みを構築し、活性化させていくこと、そしてそれを患者さんへの個別支援にも還元していくことを目指しています。

取組事例一覧