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治療と仕事の両立支援コラム

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2024.3.29

職場で病気の理解を得るには
〜理解してもらって当たり前ではなく、誠実な態度でいること〜

デジタルコンテンツクリエーター/モデル

こむぎ

YouTube等で表皮水疱症(ひょうひすいほうしょう)という病気との日常を発信されている、こむぎさんに「職場で病気の理解を得ること」をテーマにお話を伺いました。

まずは、ご自身の抱えていらっしゃる病気(表皮水疱症)についてお伺いします。
現代の医学でも根本治療ができない難病とされていますが…

表皮水疱症という病気は、皮膚が簡単には剥がれないようにする接着の役割をする細胞が生まれつき少ないことにより、軽い摩擦や刺激でびらんや潰瘍等、やけどと同等の怪我を負ってしまう病気です。
この病気によって着替えなどの僅かな摩擦や、強い痒みのせいで寝ている間に自分で掻いてしまう等で簡単に傷が出来てしまいます。ですので、色々な事に気をつけながら日常生活を送らなければいけません。
ですが、どれだけ気をつけていても些細な摩擦はどこにでもありふれていて、傷が絶え間なく身体のどこかしらにあります。入浴も、とてもつもない痛みに耐えなくてはいけませんし、そこから処置まで終わらせるとなると相当な時間もかかり、毎日が痛みと痒みとの闘いです。

「病気との生活」をYouTubeで発信されるお仕事をされていますが、
そのきっかけを教えてください。

私がアパレルで働いていた時に、病気がある事でキャリアアップの限界を感じ、「もっと健康な人と同じようにできる社会だったらな」と思ったのがきっかけでYouTubeを始めました。

発信されて良かったこと、逆に嫌な気持ちになったことなどあれば教えてください。

YouTubeを始めた時は、そんなに見られないだろうという結構軽い気持ちもあったので、沢山の人から「勇気や元気がもらえる」と言ってもらえたことは想定外でした。なので、いつもそういったコメントを見ると私も嬉しくなります。

やはり批判的なコメントを見ると嫌な気持ちになってしまいます。でも深くダメージを受けることはないので、サッと消して気持ちを切り替えています。
あとは知人の間で私がYouTubeをやっていると広まって、笑い物にされたりなどは本当に嫌な気持ちになります。私の耳まで届かないように悪口を言って欲しいと常々思っています。

インフルエンサーのお仕事をされる前は、アパレル販売員をされていたとのことですが、
ファッションの道に進まれた理由があればお聞きしたいです。
また、採用の時点で職場の理解はありましたか?

アパレルに進んだきっかけは、短大生の時にしていたアルバイト先で仲良くなった友人がきっかけでした。
本当に可愛くてセンスがあって、人としてもすごく素敵で、とても憧れていました。自分も見た目だけでもこんなふうになれたらと思い、そこから服に強く興味を示すようになり、その延長線のような感じでそのままアパレルの道に進みました。
採用の時点では病気に対する理解がありました。
ただ、口頭で説明しているだけなので、具体的なイメージはついていなさそうな印象でした。

職場(アパレル)での働きやすさについてはいかがでしたか?

アパレルは正直、表皮水疱症との相性は全然良くなく、大変働きにくかったです。できるだけ力仕事などはやらないように配慮して頂いていましたが、山のようにあるダンボールを運んだりなどは日常的にしないといけなかったですし、とにかく体力がいる仕事でしたので、身体が疲れきって傷の治りも遅かったです。 それに、身体の疲れや仕事自体のストレスなどで痒みが強くなり傷はどんどん増えていき、発熱はしょっちゅうで仕事が出来ない日も度々ありました。

今まで4社で働いて来ましたが3社は病気を理解してもらう事は難しかったです。何度も説明し、診断書を出したりなどしましたが分かってもらえず苦労しました。
4社目では、たまたま職場で少し大きめな怪我をしたことで身体の状態を見たスタッフがいた事と、当時「病気の面でもう理解してもらえないから…」と私は少しひねくれていたので色々と失敗をしてしまい、上司に色々な面でお叱りを受けた時に本当に沢山話し合い、時間をかけて話す中で理解を得ることができました。

治療を続けながらの勤務という状況について、自分から職場に対して働きかけたこと、
また利用された制度などがあれば教えてください。

利用した制度はありませんでした。職場に対しては、病状をよく説明して勤務形態を変えて頂いたり、業務を軽くして頂くように相談はしていました。

治療と仕事の両立支援という言葉は知りませんでした。当時知っていたら利用したかったなと思います。

職場で病気の理解を得るために大切なことは何でしょうか。

職場で理解を得るために大切な事は、しっかりとした説明もそうですが、謙虚さと言いますか、誠実さも大切だと思いました。本当にしっかり上司やスタッフとコミュニケーションをとること、休んでしまったら必ず全スタッフに毎回謝って回ること、出勤した日は自分の出来る範囲で真面目に業務に取り組むこと、普段の体調管理や身体の事についても、スタッフとの何気ない会話に織り交ぜるなどが大切だと思いました。

自分の身に起こっていない事は理解できないものなので、理解してもらって当たり前という態度ではなく、
少しずつでも分かって貰えるように誠実な態度でいることは重要かなと思いました。

同じように病気を抱えながら働き続けているかたたち、また、その周囲のかたに対して、
メッセージをお願いします。

病気を抱えながら社会に出て働くことは本当に大変だと思います。既に沢山頑張っていると思うので、努力しつつも、無理なく頑張り過ぎず働いて欲しいなと思います。どんなに頑張っても、どうにもならない場合もあるので、その時は逃げてしまってもいいと思います。
頑張る事も大切ですが、時には逃げたりしながら、とにかく無理のないようにしてほしいです。

また、周りに病気の方がいる場合は、その方の言葉にしっかり耳を傾けて欲しいなと思います。どんな症状があって、どんな事に困っていて、何が出来て何が出来ないのか、その中でもどんな事をやっていきたいのか、難しく大変だとは思いますが、できる限り理解を示したり等フォローをお願いしたいです。

プロフィール

こむぎ

デジタルコンテンツクリエーター/モデル

YouTube等で表皮水疱症という病気との日常を発信。
モデルや家事をこなしながら、SNSで発信を続けている。